
松本城の内部に祀られている二十六夜神、今回はその来歴について考えたいと思います。
松本城のHPにはこのようにありました。全文そのまま紹介します。
二十六夜神伝説
戸田康長が松本城に入ってむかえた初めての新年、元和4(一六一八)年正月26日の夜のこと。持筒頭もちづつがしらの川井八郎三郎という武士が、本丸御殿で夜中の城の守りをしていました。
ちょうど月が出たころ、だれかが自分の名前をよんでいるのが聞こえました。ふり向いてみると、緋ひ(赤)のはかまをつけたきれいなお姫様が立っていました。思わず八郎三郎はその場にひれふしました。
お姫様は、錦の袋を八郎三郎にあたえながら、「これから、二十六夜様をまつり、米3石(ごく)3斗(と)3升(しょう)3合(ごう)3勺(しゃく)をたいて祝えばお城は栄えていくでしょう。ただし、この袋の口は決して開けてはなりません。」というと、天守の上の方へ消えてしまいました。
八郎三郎は、このことをお殿様の康長に伝えました。康長は、天守六階の梁の上に二十六夜様をおまつりし、いわれたとおり、2月から毎月26日にはおもちをそなえて、おまつりしました。
享保12(一七二七)年、本丸御殿が火事にあったとき、天守が焼けなかったのは二十六夜様のおかげだと語り伝えられています。
このような来歴でした。愛知県の郡上八幡のお城には人柱となった女性の伝説があります。この松本城も人柱のパターンかと思いましたが、どうも違うようです。伝説や昔話というものは創作と捉えるか、事実として捉えるか、創作だとしてもそこに意味があると捉えるかで変わってきます。松本城の話も、まずは事実として受け入れてみました。気になった個所は以下です。
①殿様が来て最初の正月の26日の夜、川井八郎三郎という武士の前に女性が現れまる。
②緋の袴姿の女性が二十六夜神を祀れと指示した。
③錦の袋の中身はみてはいけない。
④米3石(ごく)3斗(と)3升(しょう)3合(ごう)3勺(しゃく)炊いて祝う
⑤毎月26日は餅を供えた。
⑥後に本丸御殿が火事になるがお城は無事。
順番に考えたいと思います。まず、①と②です。謎の女性が26夜神を祀れと言いました。正月に現れたこと、巫女のような出で立ち、要件を伝えると消えたというのはどうも霊的な存在です。
④、⑤ですが、神様に米や餅を供えるというのはよくありそうですが、問題は3石、3斗、3升、3合、3勺という具体的な数字の指定です。3が5つで15になります。
また、米や餅を供える神と言うと稲荷神が有名です。稲荷は米の精霊という意味合いもあるので、お米や餅、酒を供えるのです。
私はこの来歴から弁才天の姿を感じました。弁才天は稲荷と習合したので米や餅も関係あります。また15という数字は弁才天の御眷属、15童子を連想させます。綺麗な巫女姿の女性と言うのも姫神を連想させます。
③の錦の袋を渡され中身を見てはいけないというのも、弁才天の昔話を集めると弁天様との約束事というのが出てくることがあります。人間の願いを叶える代わりに約束をするのです。この袋、何かしらの御祭神かと思いますが、中身がよく分かりません。伝え聞く二十六夜神ではないのかもしれません。
そして⑥。偶然かも知れませんがお城は本丸御殿の火災には巻き込まれなかったというのは、この神に火伏の力があったということです。弁才天は水神です。水を自在に操る神であれば、火災からお城を守ったということはあり得るのでは?と思いました。
二十六夜神を調べると月読命であり愛染明王でもあるようです。そこに姫神は出てきません。松本城の言い伝えでは二十六夜神となっていますが、来歴に遺されたキーワードを拾って行くと、これは弁天様ではないのか?と思えてきました。
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