それでは前回の続きから、古代岡山県で起こった桃太郎と鬼の戦い、その後を見てみよう。温羅はどこか悲しくも応援したくなる鬼です。このブログも力がついつい入ります。
◎五十狭芹彦命vs温羅 続き
何故鬼達が復活してくるのか。
疑問を抱いた五十狭芹彦命は密かに部下に鬼ノ城周辺を探らせた。
すると山奥に温泉があり負傷した鬼はそこで傷を癒していることが判明した。
そこで五十狭芹彦命は部下に温泉を埋めるよう指示し、自らも呪術で温泉を水に変えたところ、鬼達は復活しなくなったのである。
だがまだ問題はあった。
どれだけ矢を射っても温羅には当たらない。温羅を倒さねば戦には勝てぬ。彼が悩んでいるとどこからともなく童子が現れ「このままでは負けるであろう」と告げた。
この童子が只者ではないと直感した五十狭芹彦命は、どうすれば温羅を倒す事が出来るか教えを請うた。
「一度に二本の矢を放て、さすれば温羅を討ち取る事が出来よう」童子はそう言い残して姿を消した。
五十狭芹彦命は教えられた通り、二本の矢を同時に温羅に向けて放った!
一本の矢は空中で岩と激突したが、残った一本は温羅に届き彼の左目に突き刺さった。
五十狭芹彦命の呪力がこもった矢を受けた温羅はたまらず鬼ノ城から転げ落ち、それを見た鬼達も一斉に逃げ出し、温羅軍は総崩れとなった。
温羅は眼から血を噴出し、鬼ノ城から足守川へ流れる小川を真っ赤に染めた。
しかし戦いはこれで終わった訳ではない。ここからは、温羅と五十狭芹彦命の呪力の戦いとなった。
まず温羅はその身を童子に変え岩の下に隠れようとしたが、五十狭芹彦命は呪力でこれを防ぐ。次に温羅は雉に変化し空を舞うが五十狭芹彦命は鷹になり襲い掛かる。なおも逃げようとする温羅は、今度は鯉に化け川に飛び込むが、そうはさせじと鵜に化けた五十狭芹彦命が後を追う。
そうして終に温羅は捕らえられ、首を刎ねられたのだった。
・・・・と今回はここまでを紹介し、考えてみたい。
元は人間対人間の戦いの伝説であるとは思うが、温羅(鬼)も五十狭芹彦命(神)も呪術を使う同じような能力を持つ存在だ。気になった個所を色文字にしてみたがまずは赤い個所、温羅達が山に長けていたことや、片目を負傷したり、川の水が赤いという記述からは温羅が産鉄民、蹈鞴(たたら)を生業としている一族だったことが分かる。
王権側に組みしない豪族は、米や鉄を持っている場合攻撃対象になる。米は生活を安定させ、鉄は強力な武器になるからだ。ひれ伏さない限り、この二つは侵略して奪うほどの価値があるのである。
青色の部分について気になるのは、謎の童子が助っ人として現れることだ。
この童子、一説には住吉明神とも云われている。童子、即ち子供の姿の神は強い霊力を持つという。鬼の名前にも〇〇童子というものが多いのもこの為だろう。
住吉明神は軍神でもある。矢を二本放つという件を読んで思い出した話があった。地蔵寺釈厄外伝記(※注1)にて狐童女稲荷(きつねめいなり)が弁才天十六童子について一柱ずつ語る場面があるが、そこから引用してみよう。6番目の童子、愛敬童子(あいきょうどうじ)について紹介する場面だ。
「六つつ目其の前座しますは 右に二本矢 左に弓持つ 乙矢は封じ矢 その名手 本地は観世音菩薩 雨霰と降りかかる 悪災魔人を退治する 強いお味方 愛敬童子(施願童子)忘れてなるまい 人の心も射止めまするに」
二本目の矢の事を乙矢という。乙とは乙女、魔を封じるには女性でなければならない。日本の神社にはあまり公ではないが、一部に封じの神社というものが存在する。これは父から教えられ・・・あまりにも悲惨な例を見つけてしまうことも多いが・・・実際に足を運んで確認したが、その場合姫神が祀られることが多い。(もしくは封じる神が強力な武神の場合もある)
住吉明神が矢を二本で倒せ(封じろ)という神託を齎すというのは、仏教の弁才天の説話もこの昔話に取り込まれているのではと思う。住吉明神が弁才天の童子の姿で現れたとも解釈できる。
こうして、温羅は討たれてしまうが、この昔話はここで終わりではない。その後、一体どうなったかはまた次回のお話です。

参考文献 鬼 新紀元社
地蔵寺釈厄外伝記 瑠須庵著
特別顧問 白旗稲荷大明神と狐童女稲荷 ありがとうございました。
※注1「地蔵寺釈厄外伝記」とは?
私の父は特殊な才能があり、幼少時より稲荷神が憑き、頻繁に稲荷神と会話をしている。ある時、近所の地蔵寺のご住職に頼まれ、戦争で燃えた寺の縁起書の執筆を頼まれる。寺に残された資料は燃える前の縁起書を見た先代が手書きで残した原稿用紙2枚だけ。その2枚が今では原稿用紙40冊を超えまだ完成していない。
稲荷神の言葉をそのまま現代語訳したもので、西遊記のように面白い話。原稿執筆にあたり、父に縁のあった稲荷神が、地蔵寺守護神、白旗稲荷大明神の御分魂の狐童女稲荷であることが判明した。不思議な話です。
◎五十狭芹彦命vs温羅 続き
何故鬼達が復活してくるのか。
疑問を抱いた五十狭芹彦命は密かに部下に鬼ノ城周辺を探らせた。
すると山奥に温泉があり負傷した鬼はそこで傷を癒していることが判明した。
そこで五十狭芹彦命は部下に温泉を埋めるよう指示し、自らも呪術で温泉を水に変えたところ、鬼達は復活しなくなったのである。
だがまだ問題はあった。
どれだけ矢を射っても温羅には当たらない。温羅を倒さねば戦には勝てぬ。彼が悩んでいるとどこからともなく童子が現れ「このままでは負けるであろう」と告げた。
この童子が只者ではないと直感した五十狭芹彦命は、どうすれば温羅を倒す事が出来るか教えを請うた。
「一度に二本の矢を放て、さすれば温羅を討ち取る事が出来よう」童子はそう言い残して姿を消した。
五十狭芹彦命は教えられた通り、二本の矢を同時に温羅に向けて放った!
一本の矢は空中で岩と激突したが、残った一本は温羅に届き彼の左目に突き刺さった。
五十狭芹彦命の呪力がこもった矢を受けた温羅はたまらず鬼ノ城から転げ落ち、それを見た鬼達も一斉に逃げ出し、温羅軍は総崩れとなった。
温羅は眼から血を噴出し、鬼ノ城から足守川へ流れる小川を真っ赤に染めた。
しかし戦いはこれで終わった訳ではない。ここからは、温羅と五十狭芹彦命の呪力の戦いとなった。
まず温羅はその身を童子に変え岩の下に隠れようとしたが、五十狭芹彦命は呪力でこれを防ぐ。次に温羅は雉に変化し空を舞うが五十狭芹彦命は鷹になり襲い掛かる。なおも逃げようとする温羅は、今度は鯉に化け川に飛び込むが、そうはさせじと鵜に化けた五十狭芹彦命が後を追う。
そうして終に温羅は捕らえられ、首を刎ねられたのだった。
・・・・と今回はここまでを紹介し、考えてみたい。
元は人間対人間の戦いの伝説であるとは思うが、温羅(鬼)も五十狭芹彦命(神)も呪術を使う同じような能力を持つ存在だ。気になった個所を色文字にしてみたがまずは赤い個所、温羅達が山に長けていたことや、片目を負傷したり、川の水が赤いという記述からは温羅が産鉄民、蹈鞴(たたら)を生業としている一族だったことが分かる。
王権側に組みしない豪族は、米や鉄を持っている場合攻撃対象になる。米は生活を安定させ、鉄は強力な武器になるからだ。ひれ伏さない限り、この二つは侵略して奪うほどの価値があるのである。
青色の部分について気になるのは、謎の童子が助っ人として現れることだ。
この童子、一説には住吉明神とも云われている。童子、即ち子供の姿の神は強い霊力を持つという。鬼の名前にも〇〇童子というものが多いのもこの為だろう。
住吉明神は軍神でもある。矢を二本放つという件を読んで思い出した話があった。地蔵寺釈厄外伝記(※注1)にて狐童女稲荷(きつねめいなり)が弁才天十六童子について一柱ずつ語る場面があるが、そこから引用してみよう。6番目の童子、愛敬童子(あいきょうどうじ)について紹介する場面だ。
「六つつ目其の前座しますは 右に二本矢 左に弓持つ 乙矢は封じ矢 その名手 本地は観世音菩薩 雨霰と降りかかる 悪災魔人を退治する 強いお味方 愛敬童子(施願童子)忘れてなるまい 人の心も射止めまするに」
二本目の矢の事を乙矢という。乙とは乙女、魔を封じるには女性でなければならない。日本の神社にはあまり公ではないが、一部に封じの神社というものが存在する。これは父から教えられ・・・あまりにも悲惨な例を見つけてしまうことも多いが・・・実際に足を運んで確認したが、その場合姫神が祀られることが多い。(もしくは封じる神が強力な武神の場合もある)
住吉明神が矢を二本で倒せ(封じろ)という神託を齎すというのは、仏教の弁才天の説話もこの昔話に取り込まれているのではと思う。住吉明神が弁才天の童子の姿で現れたとも解釈できる。
こうして、温羅は討たれてしまうが、この昔話はここで終わりではない。その後、一体どうなったかはまた次回のお話です。

参考文献 鬼 新紀元社
地蔵寺釈厄外伝記 瑠須庵著
特別顧問 白旗稲荷大明神と狐童女稲荷 ありがとうございました。
※注1「地蔵寺釈厄外伝記」とは?
私の父は特殊な才能があり、幼少時より稲荷神が憑き、頻繁に稲荷神と会話をしている。ある時、近所の地蔵寺のご住職に頼まれ、戦争で燃えた寺の縁起書の執筆を頼まれる。寺に残された資料は燃える前の縁起書を見た先代が手書きで残した原稿用紙2枚だけ。その2枚が今では原稿用紙40冊を超えまだ完成していない。
稲荷神の言葉をそのまま現代語訳したもので、西遊記のように面白い話。原稿執筆にあたり、父に縁のあった稲荷神が、地蔵寺守護神、白旗稲荷大明神の御分魂の狐童女稲荷であることが判明した。不思議な話です。
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