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2019-05-07

◆温泉寺 中編

千手観音像への参拝を終え、お寺の方の案内で本堂へ進む。室町時代に再建された本堂は国の重要文化財に指定されている。

温泉寺境内

温泉寺の本尊、秘仏十一面観世音菩薩像は毎年の4月23・24日の二日間に御開帳となるが、この時は上半身しか拝むことが出来ない。


33年に一度の本開帳では、3年間の長きに亘り、厨子から引き出されて拝観出来るという変わった御開帳である。


本開帳の期間だけ、全身を目の当たりに出来るのだ。


薄暗い本堂の案内された場所は、観音像のすぐ隣だった。


温泉寺3
(画像は温泉寺で購入した図録より)


像高213、5センチの大きな十一面観音だ。桧の一木造のどっしりとした尊像だった。お寺の方の話によれば天平時代の作とのことであった。


お顔が大きく、腕は太くて長い。そして全身に鑿(ノミ)の跡が見える。


井上正氏の著書によれば、全身のバランスを崩したり、誇張したり、歪めたり、あるいはわざと未完成のような鑿の跡を残して完成させる像は、霊木化現の古像に見受けられる特徴だという。
 
 
誇張したアンバランスさからは尋常ではない力を、鑿跡を残すのは、木がだんだんと変化し、やがて仏の姿になって現れる様子を表現しているという。
 
 
神道的な考え方だと神は木に宿るとする。神社には、ある意味「社」よりも重要な「御神木」があるし、神を数える単位は「柱」である。


柱という字を分解すると、「木」の「主」と書く。木の主とは誰かと言えば、神のことだ。その神が宿る霊木で彫られた仏像が霊木像である。(神像もある)その木で彫ること自体が重要なので、造像に向かない木で彫る場合も多い。

 
例えば、節だらけの木や半ば朽ちていたり、洞がある木でもお構いなしで造ることもある。


古いお寺で祀られる霊木像には、造像に至る昔話が残っていることがあるが、その場合パターンがある。

 
まず、祟りまくる霊木がある。御神木とは気づかずに傷つけたり、切り倒したりしてしまい、神の怒りを買いそれが祟りとなる。疫病や災害が起きたりして人が死にまくる。祟りと言う字は分解すると「出」と「示」となる。
 
 
文字通り、神を怒らせる行為を人がやってしまった場合、この世に「出」て、その力を「示」すのだ。そうなってくるともうどうしようも無くなるが、唯一の解決策は然るべき力をもった僧侶が供養し、仏を彫り祀ることでやがて祟りは収まり、今度は御利益に変わると云うものだ。

 
全国の霊木像には、調べるとこのような昔話が残っていることは多い。


個人的には平安以前の仏像は、そのほとんどが霊木像ではと思う。そういう木で彫られた仏像には強い力があるので、あえて求められて造られたのではないのか。
 
 
温泉寺の十一面観音像を間近でお参りし、その雰囲気にすっかり飲まれてしまった。前回のブログで紹介した千手観音も凄かったが、こちらはまた凄い仏像だった。同席した家族も、その霊威と言うか神秘性というか、何かしらの力を感じていたようだった。仏像に関心の薄い人でも、この距離まで近付けば何かを感じると思う。


帰宅後、ブログを書くにあたり調べ物をしていたら、こんな情報を見つけて驚いた。前回冒頭で紹介した寺の縁起にもあったが、この十一面観音像は、奈良県の長谷寺にある巨大な十一面観音像と同じ霊木で彫られているというものだったのだ。


長くなって来たので今回はここまで。


前後編の二回で終了予定でしたが出来ず、中編となりました。次回は後編です。


 
※参考文献 「続」古仏   井上正著   法蔵館
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プロフィール

紅葉屋呉服店:店主 加藤大幾

Author:紅葉屋呉服店:店主 加藤大幾
名古屋市内で呉服中心で古美術も扱っているお店をやっています。

主に趣味のお寺と神社の参拝を中心としたブログです。

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