父と問屋さんのHさんは、東寺の蚤の市に出かけた。寺の門を潜った直後、父に異変が起こった。両足が急に重たくなり、地面に吸い付いてしまったのだ。足を動かそうにも微動だにしない。それでもなお力を込めたら「ベリベリベリ!」と靴底がばりばりに剥がれてしまった
身体も急にだるくなる。Hさんに悟られまいと、今起こった事は秘密にし歩き始めた。
暫く歩くと更に異変が続く。気付くと騒がしい境内の音が聞こえなくなっていた。「あれ?」と思ったら次は話し声が耳元で聴こえてきた。耳を澄ますと、父の右と左で何かが話をしている。
「おう。よく来たな」「逃がすなよ」「おまえ、良かったなぁ。今日ここで死ぬぞ」というような内容だ
やがて「ギャギャギャギャ!」というような笑い声が聞こえてきた。お経のようなものも聴こえてくる。
仏像の近くに行けば消えるかもと思い、東寺の本堂に入った。最後にとんでもないものを、父の殆ど見えない左目が捕らえた。金色眩い巨大な千手観音が地面の底から「ゴゴゴゴゴ
」と現れたのだ
呆然と立ち尽くす父。金色の映像は更に続き曼荼羅に登場する数多の御仏が次々と現れては消え、やがて我に返った。
時間で言えば数秒の体験だったがとても長く感じたそうだ。寺を後にし、Hさんに東寺で体験した出来事を話し、粉々になった靴底を見せた。じっと父の話を聞いていたHさんはこう言った
「何か様子が変だった。実は、紅葉屋さんが気を悪くすると思って言わなかったが、紅葉屋さんの周りからずっとお経が聴こえてましたよ。周りはやかましい筈なのに、お経だけがはっきり聴こえたんです・・・」
~続く~

暫く歩くと更に異変が続く。気付くと騒がしい境内の音が聞こえなくなっていた。「あれ?」と思ったら次は話し声が耳元で聴こえてきた。耳を澄ますと、父の右と左で何かが話をしている。
「おう。よく来たな」「逃がすなよ」「おまえ、良かったなぁ。今日ここで死ぬぞ」というような内容だ

仏像の近くに行けば消えるかもと思い、東寺の本堂に入った。最後にとんでもないものを、父の殆ど見えない左目が捕らえた。金色眩い巨大な千手観音が地面の底から「ゴゴゴゴゴ


時間で言えば数秒の体験だったがとても長く感じたそうだ。寺を後にし、Hさんに東寺で体験した出来事を話し、粉々になった靴底を見せた。じっと父の話を聞いていたHさんはこう言った
「何か様子が変だった。実は、紅葉屋さんが気を悪くすると思って言わなかったが、紅葉屋さんの周りからずっとお経が聴こえてましたよ。周りはやかましい筈なのに、お経だけがはっきり聴こえたんです・・・」
~続く~
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