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2021-02-09

◆弁才天像の修理に至るまでの経緯   ~弁天様との御縁の話 最終回~

前回その6はこちら

修理前の弁才天です。開眼後の写真はちょっと撮れないと思いましたので、発遣後のお写真です。


私は仏像好きなので、今までお参りにいったお寺で撮影の許可を頂いたら仏像の写真を撮っていましたが、今後はそういうこともより慎重になりそうです。やはり寺院で祀られる仏像は全て開眼されているので、そう気軽に撮ってはいけないものだと、自分が弁才天像の供養に立ち会ったことで、勉強・・・というより思い知らされました。

弁才天像 修理前

厨子は新品同様の直しをしましたが、弁才天は現状を維持したまま、古色を保ったまま直すことにしました。やはり様々な人が拝んだと思いますので、そういう歴史を感じるような直しにするのも大事かなと思った次第です。
 
 
手を入れた個所を言えば、まずは全体的に埃が堆積しているので、お掃除ですね。

 
弁才天像 修理前②

それと亡失した個所の修復です。青○部分には鳥居があったはずです。宇賀弁才天像は、弁天様の頭上に宇賀神というお顔が老人、体が蛇の神様が乗っています。この神様の由来をしらべたら、どうも稲荷神と同体であるようです。
 
 
それと青矢印の部分。頭に被る宝冠ですが、頭に刺さって固定してありますので、これをまず抜くことにしました。何か仏像の頭に飾りを刺して固定するというのが、どうにも辛そうというか、いけないような気がしたからです。
 
 
仏師さんに聞けば、当時の仏像の作り方でこういう差し込むというのは、割とあったそうです。
 
 
古美術品として見れば、当時の作り方を忠実に踏まえて直さねばならないでしょうが、信仰の対象としてこれからも祀っていきたいので、心の声に従いました。冠の飾りは引き抜き、残った穴は埋めてもらい、亡失した鳥居共々新造することにしました。
 
 
新造した冠は輪っか状にしてもらい、上から被せる形にしました。
 
 
弁天様の背後の円光背は、中心がずれているので正面にくるようにしてもらい、光背の飾りの一部変形している個所も元通り直してもらいました。
 
 
弁才天像 修理前③

宇賀弁才天は八本の腕がありますが、それぞれの手には持物があります。画像で言えば上が鍵、下が矢です。鍵は宝蔵の印やくとも言いますが、悟りを開くための知恵が詰まった蔵を開ける鍵、矢は愛染明王が持っている弓矢の矢です。(確か)
 
 
これもひん曲がっていましたので、元通り直してもらいました。折れたら新造して下さいと伝えましたが折れなくて良かったです。こういう仏像はそうそう触ることは出来ないので、何故にこんなに持物が変形しているのか謎でしたが、頻繁に持ち運びで移動していたとすれば、揺れる度にぶつけて曲がったのかもしれないですね。
 
 
弁才天像 修理前④

蓮花台の下の板裏も漆が剥がれてボロボロだったので、一旦剥いで塗り直してもらいました。
 
 
弁才天像 修理後①

こちらが修理を終えた弁才天像。写真の撮り方のせいかもしれませんが、修理前と随分印象が変わったような・・・。


全体的に掃除をしてもらったことで、思った以上に色彩が豊かな像だと分かりました。変形した持物、光背も当初の様相に近付いたかと思います。
 
 
弁才天像 修理後②

鳥居付の宝冠も立派です。仏師さんからは金色のままか、あるいは古色仕上げにするか聞かれたので、古い像に冠だけピカピカはおかしいかなと思い、古色仕上げにしてもらいました。
 
 
家に弁才天像を持ち帰り、良くなったなぁと眺めていた所「あれっ?」と思う箇所を見つけました。手に持つ剣です。


弁才天像 修理後④

修理前の剣はくの字に折れ曲がっており、修理後はまっすぐになっていましたが、冠から垂れる衣(?)が剣の前にあったのです。

弁才天像 修理後③

この場合、衣は剣の後ろにあるのが自然です。蔵書の中から弁才天像の写真を探しましたが、同じような形状の冠の場合、やはり剣の後ろに衣が来ているのが正しいようでした。
 
 
「どうしよう。直すか?」
 
 
と考えましたが、自分よりもはるかに仏像の造形に詳しい仏師が、果たして間違えるだろうか?これは理屈が分かっている仏師でも、こういう形にさせられたのでは?と思いました。


こちらの宇賀弁才天様は、滅多なことでは剣を振るいたくないのではと解釈しました。
 
 
父に聞けば、「在家で祀るには、この姿の方がよりマイルドになるからもう触らない方が良い」というのが見解でした。
 
 
弁才天は七福神として、紅一点の女神として庶民の神様となりました。御利益的には金運・財運・芸事の神様とされました。しかし、本来は才能の神、弁舌の神であり、うんと古い時代は「怨敵退散」の御利益があるとされてきました。
 
 
そういう歴史を踏まえると、聞きたくもない願いを聞いた可能性も否定できません。その傷んだ姿からすれば、かなりご苦労された弁天様ではないか?と推測しました。
 

さて、こうして完成した弁才天像。開眼の儀式もA和尚に御尽力頂き、無事終わりました。

 
現在、毎日お参りしておりますが、ここまでこれたのも、遠方よりお経を上げに来てくれたお坊様、また丁寧な直しをして頂いた仏師さん、私の行動を理解してくれた家族、そして直すチャンスを与えて下さった弁天様のお陰です。何が一つ欠けてても成し遂げれなかったでしょう。本当にありがとうございました。
 
 
ただ、これからがまた大変でもあります。頂いた御縁をどうするか、どう繋げていくか、そして私自身も心の勉強をしなければと思う今日この頃です。
 
 
今回のテーマはこれにて終わりです。最後まで読んで頂きありがとうございました。



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プロフィール

紅葉屋呉服店:店主 加藤大幾

Author:紅葉屋呉服店:店主 加藤大幾
名古屋市内で呉服中心で古美術も扱っているお店をやっています。

主に趣味のお寺と神社の参拝を中心としたブログです。

◆紅葉屋呉服店
momijiyagohukuten.com

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