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2021-01-29

◆弁才天像の修理に至るまでの経緯   ~弁天様との御縁の話 その2~

※前回その1はこちら

お客様と私と父でとある大きな会場の骨董市に出かけました。


紅葉屋呉服店は着物屋ですが、茶道具や骨董品も少し取り扱っています。


私も父も古美術品は好きなので、同じ趣味のお客様と出かけた訳です。今から10年位前のお話です。


「何か目ぼしい物があったら教えろよ」
 
 
と父から言われ、私は単独で広い会場を歩いていました。


あまりにも大きな会場だと1点1点全部見ると流石に疲れます。なので自分の得意分野に絞り、ぼんやり全体を見る感じで探すと早く見て回れます。
 
 
会場の入り口から見て、一番奥右隅から2軒目の出店の前をふらっと通った時、眼に行き成り飛び込んできたものがありました。黒塗りの厨子に入った小さな弁才天像です。



pics922.gif



(あっ! 弁天様だ!しかも宇賀弁才天だ!)
 
 
心の中で叫びました。弁才天像には腕が二本で琵琶を持った御姿と、頭上に宇賀神を乗せた腕が八本ある御姿があります。より密教色の濃い方が宇賀弁才天像だと云えます。


弁才天御姿



前回のブログの通り、丁度この頃は弁天箱に真剣に向かい合おうと、気持ちを切り替えて間もない時期です。弁才天の信仰を強く持たねば箱は動いてくれないと気付き始めたその最中に、たまたま訪れた骨董会場で宇賀弁才天の古像と出会うとは思いもよりませんでした。

 
蚤の市や骨董市では、まず凄い仏像と言うのはありません。古い仏像というのも殆どないです。
 
 
それを周知の上でしたが、よりにもよって非常に珍しい天部(てんぶ)である宇賀弁才天像が店頭に無造作に並べてあったのです。


気分を落ちつけ、今度は古美術を観る目で、拙い知識を総動員して観察しました。弁才天像と厨子はどちらも江戸期のもので間違いなさそうです。ただ、厨子の状態はかなり劣化していました。漆は剥げ剥げ。厨子内側の金箔もボロボロ。厨子の扉も一部欠損していました。


肝心の弁才天像はと言えば、頭上の冠は半分無くなり、手にする持物は八個現存するものの、金属製の為どれもひん曲がっていました。光背も位置がおかしいです。全体的に汚れも目立ちました。


正直に言えば、古美術的には状態はそれほど良くはなかったです。

 
しかし、強烈に惹かれました。これは拾っておくべきでは?心の内はそんな声でした。


次に浮かんだのは母の顔でした。もしこれを家に持ち込んだら、


「昔から祀っている仏さまがあるのに、増やしてどうすんの!?」


と言われるのは目に見えていました。至極当然です。



いろいろな思考が頭を巡りますが、買わずにこの場を離れるという選択肢はありませんでした。この宇賀弁才天像は何か入っていると直感しました。


仏像は祀るものだというのが我が家の認識なので、私の一存では結論を出す訳にもいけません。でも売れてしまったらどうしようという事で、


「これはちょっとよけといて」


と店主に伝え、父を連れてきました。稲荷と言葉を交わせる父なので、稲荷神の意見を聞きたかったのです。 
 
 
じーーっと観察していた父は一言、

 
「もらっておこう」 
 
 
と言いました。


こうして我が家に祀る仏様が一つ増えることになりました。



続く~


紅葉屋呉服店はこちらまで



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2021-01-28

◆弁才天像の修理に至るまでの経緯   ~弁天様との御縁の話 その1~

世の中には様々な御縁があります。人の縁、動物の縁、本の縁、物の縁、etc.・・・。


その人にとって皆違う沢山ある大切な御縁の数々ですが、その御縁の中で、個人的に「これは大きいな」と思ったのは神仏の御縁です。


元々、先祖より仏像を祀る家ということ、そして父親が特殊な才能(お稲荷さんと喋っている)をもっているお陰?で、殆どの人が「そんなことはある訳ない」ということが、「普通の出来事ですよ。そんなことは」と言えるほど、不思議なこと神仏に纏わることを頻繁に学ばせて頂いておりますので、今では心より御縁の有難さを実感しております。

 
いずれこれらの不思議な話は子孫に残すべく、「紅葉屋霊異記(仮)」として文章化しようと、今少しずつ纏めております。


そんな変わった我が家ですが、平成20年、あるオリジナル商品を当店で販売することになりました。


それは今は亡き祖母が嫁入り道具の一つとして持参した「弁天箱(弁才天十種神宝の箱」と呼ばれるものの複製です。祖母の生まれ育った地域では、弁天様より知恵を授かる魔法の箱と呼ばれ、人に話すことなく広く分布していることが分かってきました。


御縁のあったお客様には使い方もお伝えしております。
 
 
我が家は信仰心のある家だなと思いますが、その中でも父はより強いものがあります。その父が祖母から伝わるこの不思議な箱を複製し、販売すると決めました。


当店は祖父の代からの着物屋ですが、着物とは関係のないものの商売です。当初、神仏に関することは一般的な人よりは信じている自分ですが、これは売るのを止めようと反対しました。


霊感商法みたいに思われるのが嫌だったからです。
 
 
父は今、商いを引退しましたが、現役の頃は本当に凄い営業マンでした。話が面白い、着物やその他の知識が凄い、占いはバシバシ当たるということで根強いファンのお客様が今でもいますが、そういう御贔屓にしてくださるお客様でも、弁天箱の話をすれば離れてしまうのでは?と思ったからです。


「100人に話せば、99人が離れるかもよ?それでも売るの?いくらお父さんでも売れるの一つかもよ?」
 
 
と聞けば、


「おまえ、変なことを言うなぁ。1人買えば大成功じゃないか。例え99人のお客様が離れて行っても、買った1人は、あの弁才天とご縁があったことになるんだぞ? しかも正しく使えばその人や、その人の子孫は繁栄が約束される。何がいけないのか?」
 
 
との答えが返って来ました。


「なるほど。そういう考えか・・・。」


父の熱意に打たれて、手伝うことになりました。


しかし販売を開始した年から3年間、私は一つも売ることは出来ませんでした。


父はと言えば、この間に100セット近く販売しておりました。父がお客様に話すと、お客様は食い入るように聞き納得しますが父から又聞きの私の話だと茶化されてしまうのです。「そんなこと、ある訳ない」と・・・。


今思えばこれは至極当然で、箱を使いこなしている父と、頭では理解していても行動に移せていない当時の私では、弁天箱の真の理解度、そのセールストークは天地の開きがあったからです。
 
 
これは売るのは無理だと諦めた私は、弁天箱の話はあまりお客様にはしないようになりました。


しかし、やらざるをえない状況に自分は踏み込んでいたと自覚させる出来事がありました。


父が入院したのです。


元々父は血液に関する難病を患っており、最初の発病からの入院、手術、治療を受けての退院時、医者から、


「この病気は、再発して命が助かった人はいないので、くれぐれも風邪などひかないよう体には十分に気を付けて下さい」


と言われた父が再発したのです。(結果、この時は持ち直して退院する)


その入院した日、父が弁天箱を販売したお客様より電話がありました。使い方についての質問です。電話を受け取ったのは私でしたが、その時、お客様の質問に対する返答が直ぐに出来ませんでした。分からなかったのです。

 
お客様には父が入院したことをつげ、後で聞くので夜にでも電話しますと言い、電話を切りました。


まずいと思いました。


もしこれで父が逝ってしまったら、息子の私が弁天箱のことを全く知らないとなると、父を信じて買ってくれたお客様の信頼を裏切ることになる。結果的にお客様が離れて行ってしまうことになるかも・・・。


ようやく、自分の置かれた立場がハッキリと分かりました。私は既にこの時点で弁天様に首根っこを掴まれていたのだと思いました。もはや途中下車は出来ないと・・・。
 
 
病院へ急いで見舞いに行きがてら、お客様からの電話の質問を父に伝えました。こう答えておきなさいと言われた後、父に詫びました。
 
 
弁天箱について、半信半疑であったこと、あまり実が入ってなかったことをです。


そしてもう一度父に使い方の要点を教えて欲しい、今度こそきちんと覚えるからと述べました。


詳しくは言えませんが、父は一個人店のセールスマンとしては驚異的な成果を残した人です。借金も無しです。


それはカラクリを話せば、知恵を弁天様から頂いて実行したからだと本人は私に言いました。


私にも出来るかと聞けば、やる気になれば誰でも出来るとのこと。


最後のチャンスだと思いました。ここで覚えないと、お客様のフォローも出来ない。使いこなすにはどうしたら良いか。要点を教えてもらいました。(弁天箱はあらゆることに使えると知る。後日談になりますが、私はこれで嫁と結婚し、なかなか出来なかった子供も授かりました。長い話になるのでブログでは割愛します)


箱の練習をし、向き合い始めると、すぐに気付かされました。


「これは弁天様を信じないと箱は動きようがない」


ということでした。


もっと言えば、弁才天と正しく向き合うという事は、神道の神、仏教の仏をもっと知り、もっと向き合わねばならないという事でもあります。


「箱をきっちりと正しく使うにはどうすれば・・・」

 
真剣に考えるようになった時、本当に偶然でしたが、たまたま誘われて行ったとある骨董市で大きな出会いがあったのです。

弁才天御姿


長くなったので今回はここまで。最後まで読んで頂きありがとうございました。



※紅葉屋呉服店はこちらまで
プロフィール

紅葉屋呉服店:店主 加藤大幾

Author:紅葉屋呉服店:店主 加藤大幾
名古屋市内で呉服中心で古美術も扱っているお店をやっています。

主に趣味のお寺と神社の参拝を中心としたブログです。

◆紅葉屋呉服店
momijiyagohukuten.com

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