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2022-04-10

この世とあの世

仏教世界では生きていた時の行いにより、死後どこの世界に生まれ変わるか?が決まるとされています。


そもそもですが、あの世はあるのか?ないのか?


死後の世界を信じるか信じないかで今の生き方は変わってくると思います。


私は死後の世界は存在すると思います。神仏のいる世界や、地獄の世界が仏典にあるような世界かどうかは分かりません。実際に死んでみないと誰も分かりませんが、私はあると信じています。

 
駆け足ですが、死後の世界をざっと見てみましたが、これ死後の世界という考え方は、実はそのまま現世にも当てはまるなと思いました。


ようするにこの現世に地獄も極楽も餓鬼道も修羅道も存在しているなということです。修羅道などは争いばかりですが、現実でもロシアとウクライナは殺し合いの戦争をしています。これは事情はどうあれ、武力で制圧をしかけるロシアが悪いと思いますが、現実世界でプーチンは修羅道(地獄かも)を歩いているわけです。
 
 
調べている内、江戸時代の白隠禅師(臨済宗)の興味深い話がありました。このようなものです。



白隠禅師はある時、一人の侍からこう問われた。「地獄はあるのか、ないのか」と。

その時禅師はこう答えた。

「見たところ、立派な侍のようだが、まだ地獄の有無が分からぬのか?そんなことも分からぬか?」

と罵倒した。

最初の内は無礼に耐えていた侍だったが、白隠禅師の挑発に耐え兼ね、ついに刀を抜いた。

それを見た白隠禅師、逃げ回りながら更に挑発する。

そしてついに追い込まれ、斬られそうになったその時、

「そこが地獄だ!」

と一喝した。

この一言を聞いた侍、「はっ!」と我に返り、思わずその場で平伏し、己の至らなさを悔いた。

すると白隠禅師は笑いながらこう言った。

「そこが極楽だ。」




と言うものです。地獄の描写を聞くと、絶対にこんな世界には堕ちたくない。出来れば天界とか極楽が良いと思う人が多いでしょう。そのために仏縁を求めたり、仏教を学ぶ姿勢は尊いと思いますが、今生きている世界しか分からない、知り得ないのであれば、今この瞬間が一番大切なのも事実です。何をすべきか?

 
白隠禅師はこんな道歌を遺しています。


極楽は 西にあらでも東にも 来た(北)道さがせ みな身(南)にあり


また白隠禅師はこうも述べています。


「西方十万億土の彼方にあると云われる極楽を、あちこち探しまわるが、実は他でもない自分の心の中にあるのだ。」

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白隠禅師 画像はネットより

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参考文献 仏尊のご利益功徳事典 大森義成 著 学研
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2022-04-09

◆極楽世界

地獄道・餓鬼道・畜生道・阿修羅道・人道・天道と、仏教世界にある六つの世界を簡単ながら知らべてきました。


この六つの世界は六道(りくどう)と云いまして、例えば人間として生まれたある男が、様々な経験をして亡くなったとします。生きていた間に行った事、仏様の目から見て良いこと、悪いこと、何をしたかによって次の生まれ変わり(転生)で、また人道に生まれるのか、あるいは畜生道か、それとも地獄道か、天道かというように決まります。
 
 
生まれ変わった地でも寿命がありますので、またそこで生きた行いにより、次の転生先に生まれ変わります。この六道の中をぐるぐるとさ迷うことを六道輪廻(りくどうりんね)と云います。


仏教にはこの六つの世界以外にも、実は存在する世界があるとされます。それが浄土(じょうど)です。


菩薩や如来がいる世界です。
 
 
浄土は所謂仏教的に見て、善人が生まれる世界と云われています。浄土に生まれ変わるとそこで菩薩や如来から仏道修行を受けられるようです。浄土に転生して住むことを往生(おうじょう)と云います。悟りを開いて自らが仏になる解脱(げだつ)とは違います。往生はそこでも仏になる為の修行が続くということです。
 
 
因みに仏と言うのは仏教世界では如来をさします。
 
 
仏教については私もまだまだ分からないことだらけですが、浄土という言葉は昔から聞いたことがありますが、それは浄土の前に極楽がつく「極楽浄土」でした。このよく聞く極楽浄土とは、調べてみたら阿弥陀如来がいる浄土のことでした。
 
 
また、浄土は一つではなく如来や菩薩の数だけあるようです。例えば、薬師如来がいる浄土は瑠璃光世界、文殊菩薩は清涼山、観世音菩薩は補陀落山、地蔵菩薩は伽羅陀山というように、無数にあるようです。


どれが良いとかそういうことではなく、人それぞれ生きていた時の仏縁、信仰心によって行くところが変わってくるのかなと思います。


ただ、地獄に堕ちる人間の罪状を見るに、普通に生きてても全員該当しそうなので、天界よりも上にあるであろう菩薩や如来の世界に行くのは至難のことでは思います。


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参考文献 仏尊のご利益功徳事典  大森義成著 学研



2022-03-23

◆地獄の鬼について調べてみた。「役鬼」

前回のブログで牛頭鬼と馬頭鬼について調べました。地獄の鬼達を一括りに言うと「獄卒鬼(ごくそつき)」と言いますが、この獄卒鬼は大まかに分けると「役鬼(えんき)」と「羅刹(らせつ)」になるようです。
 
 
羅刹は元々地上にいて人に害をなしていた悪鬼の類、役鬼は閻魔大王の忠実な家来とされています。役鬼は羅刹や夜叉が原型のようですが、今日では仏教に出てくる地獄世界の住人という立ち位置のようです。


閻魔大王の家来の鬼、役鬼。この鬼達の昔話がありました。今昔物語です。こんな話でした。



奈良時代の話。大安寺の西の里に橘磐嶋(たちばなのいわしま)という者がいました。彼は大安寺で銭を借り、越前国敦賀で買った商品を船に積み込んでいたところ、突然病気になった。

 
橘磐嶋は船旅を続けるのは辛いので、早馬を借りて帰宅することに。その途中、近江国高島郡の湖畔を通りかかった際、ふと後ろを振り返ると、三人の男達がついてきているのに気付いた。
 
 
やがて追いついた男たちに橘磐嶋は尋ねた。


「あなた方はどちらへ行かれるのですか?」

「俺たちは閻魔大王の使い。大和の磐嶋という男を捕えに来た」


驚いた磐嶋。続けて理由を問いました。


「俺たちはお前の家に行ったが、お前はおらず、商売に出かけ留守だと聞いた。敦賀まで出かけ捕まえようとしたが、俺たちの前に四天王の使者が現れたのだ」
 
 
と鬼達は言いました。聞けば、四天王の使者は磐嶋が寺から金を借りていること、その借りた金を返す前に死んでしまっては寺が困ることを鬼達に告げました。四天王も寺が困るのを黙って見ていられなかった様子。
 
 
「そういう訳で、お前が家に帰るまでは許すことにした。それはそうと、お前を追う内に俺たちは腹が減って疲れた。何か食い物はないか?」
 
 
磐嶋は道中で食べていた干し飯を差し出すと、鬼達はむさぼるように食べた。


「お前は俺たちに近づくな。お前の病気は俺たちのせいだからな。しかし、恐れることはないぞ」
 
 
帰宅後、磐嶋は鬼達を招き入れ、大いにもてなした。何とか許してもらえないかと思ったのだ。そうこうしている内、役鬼の一人がこうもちかけた。


「俺た達は牛が大好物なのだ。牛がたまに不自然な死に方をすることがあるが、実はあれは俺たちの仕業だ」
 
 
それを聞いた磐嶋、家で飼っている牛二頭をあげるから、命だけはと懇願した。それを聞いた役鬼達もまんざらでもない様子。


「そうだな、お前には随分世話になった。その恩は返さねばならんが、お前を許すと俺達が鉄杖で100回打たれてしまう。・・・お前と同じ年の男は他におらぬか?」
 
 
「ここら辺りにはおりません」

 
「ええい!貴様、何年だ!」


「戊寅(つちのえとら)生まれですが」


「戊寅生まれの男なら心当たりがある。お前の代わりにそいつを捕まえるとしよう」


暫くして鬼達は満足した様子で立ち上がった。


「ふう、うまい牛であった。俺たちはいずれ閻魔庁で罰を受けることだろう。そこでお前に頼みがある。俺たちが罰を受けぬよう、金剛般若経を100巻読経せよ。いいか、忘れるなよ。俺たちの名は第一に高佐丸、第二に仲智丸、第三は津知丸だ」


鬼達が去ったのは夜半のことで、朝になって磐嶋がみると、牛が一頭死んでいた。


早速磐嶋は大安寺の南塔院へ行き、事情を話して役鬼達のためにお経を読んでもらうように頼み、祈った。務めを二日間で果たし、三日目の明け方になると鬼達が大喜びで現れた。


「金剛般若経のおかげで杖刑を免れた。その上、食事の量も増えたぞ。これからは毎月六斎の日に、俺たちのために功徳を積み、食べ物を供えてくれぬか?」
 

と磐嶋に頼むとかき消すようにいなくなった。この後、磐嶋は90余歳まで生きたという。


・・・というものです。岩島は役鬼達の頼みを生涯に亘って続けたのでしょう。この時代に90余歳というのはすごいことです。


獄卒鬼を調べていたら、地獄の鬼、役鬼の興味深い昔話が出てきました。仏の力、経典の力と祈りの気持ちは、地獄の鬼にも届くということです。また鬼の中にも約束は守る鬼もいる、鬼には鬼の筋の通し方があるとも読めます。
 
 
それと、牛を二頭差し上げると言った磐嶋でしたが、鬼達は一頭しか牛の命を奪わなかったというのも、鬼の中のルールがあるようにも思えました。

 
鬼は恐ろしい、怖い、強い、残虐というイメージはありますが、100%悪かと言われれば、そうでもないです。毘沙門天の御眷属のように、仏門に入った鬼もいます。そういう鬼は神々のお手伝いが役割です。
 
 
地獄の鬼も基本、役割を全うしているだけなのでしょう。

 
赤鬼と青鬼


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参考文献 鬼 新紀元社

 
 




2022-03-20

◆地獄の鬼について調べてみた。

地獄の住人には極卒鬼という鬼の一族がいますが、その極卒鬼達のリーダーと目されているのが牛頭鬼(ごずき)、馬頭鬼(めずき)です。その名の通り頭が牛の鬼と、頭が馬の鬼です。かなり凶暴な鬼のようです。


牛頭鬼は女版の牛頭女(ごずめ)もいます。地獄の鬼なので、堕ちた亡者をいたぶるのがお仕事ですが、人の世界にもたまに現れることがあるようです。


今昔物語の17巻にこの牛頭鬼のお話がありました。


ある夜、老若二人の僧侶が、荒れ果てた古寺に泊まりました。夜半になると、化物が現れ、二人の僧侶に襲い掛かりました。辺りは暗闇です。一体何が襲って来たのか分からず堂内を逃げ回りましたが、老僧の方は捕まってしまい、引き裂かれて食べられました。


若い僧は懸命に法華経を念じつつ逃げまどい、本堂にいくつかあった仏像の一つに抱き着き震えていました。やがて化物は次の獲物をと、若い僧の方へ近づいて来ました。


しかし、どうしたことか化物は突然倒れてしまいました。


朝になり、若い僧は何が起こったのか理解しました。化物は牛頭鬼であり、身体が三つに切られていました。そして自分が抱きついていた仏像が毘沙門天だったと分かりました。
 
 
毘沙門天の鉾先には血が付いていたそうです。


毘沙門天は元々は夜叉の王なので、この恐るべき牛頭鬼でも全く歯が立たなかったということですね。この若い僧侶も危機的状況下でも恐怖に負けず、仏様を信じ、法華経を念じていたので助かったのでしょう。神仏の力を受け取るコツみたいなものが、この話に隠れているかもなと読んでいて思いました。


牛頭鬼は相手が僧侶であるにも関わらず、しかも食う目的で人間を襲うというのは、鬼は鬼でもかなり危ない鬼だというのが分かります。また牛頭鬼・馬頭鬼は人間を殺すという凶暴な面があるだけではなく、生前の行いによって地獄に直行する人間を迎えに来るというお話もあるようです。


元々日本にいた鬼ではなく、仏教伝来と共に日本に入ってきた鬼のようです。顔が馬とか牛と言うのはどういう意味があるのか。人間に殺された動物が鬼となったということか?良く分かりませんが、ギリシャ神話でも中国の神話でも、日本の古くから祀られる神の中にも顔が牛と云う存在は出てきますので、不思議な感じはします。

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2022-03-18

◆地獄道について調べてみた。 

六道世界の最後は地獄です。六道世界の描写で、一番強烈なのがここです。


人道の中の私達人間が住む世界が瞻部州(せんぶしゅう)ですが、その地下にあるのが地獄です。


49日の裁判が終わり、生前の行いにって六道のどこかに転生する訳ですが、仏教的に見て「酷い行い」をした者が落ちる世界が地獄です。
 
 
地獄は複数ありますが、有名なのは八大地獄と呼ばれる世界です。


人道の下にある八大地獄は八層に分かれており、下に行くほど重い地獄となります。それは上から順番にこのようになっております。長いので簡潔に致します。


・等活地獄

殺生を犯した者が落ちる場所。四六時中殺人にまで発展する喧嘩が行われている。自分の意思に関係なく殴り合いをする。無理やり喧嘩をするのが罰ということ。地獄の鬼、牛頭(ごず)、馬頭(めず)がいつも辺りを徘徊し、罪人を見つけると鉄棒で粉々に打ち砕く。生活の為に殺生をしない貴族以外は堕ちると考えられていたようです。


・黒縄地獄

生前、殺生と偸盗(ちゅうとう:盗みをした)の罪を犯した者が堕ちる地獄。大工が使う、材木に線を入れる道具、墨縄(すみなわ)で体に線を引かれ、鬼たちに斧やノコギリで切り裂かれる。墨縄を使うので黒縄(こくじょう)地獄と云う。


・衆合地獄

殺生、偸盗、邪淫の罪を犯したものが堕ちる地獄。美男美女がいる樹木があり、そこをめがけて罪人が登るが、葉が刀のようにするどく罪人を切り刻む。ようやく登っても、そこに美男、美女の姿は無くこんどは樹木の下に現れる。またそこ目がけて降りるので、身体がまた切り刻まれる。圧殺、すり潰しの刑もある。

 
・叫喚地獄

殺生、偸盗、邪淫、飲酒の罪を犯した者が堕ちる地獄。ドロドロに溶けた灼熱の銅汁を口から流し込まれる。


・大叫喚地獄

殺生、偸盗、邪淫、飲酒、嘘の罪を犯した者が堕ちる地獄。舌を抜かれたり、焼けた針で舌を刺されるなど。殺生、偸盗、邪淫、飲酒、嘘、この五つは仏教に帰依した在家の者が守らねばならない戒律とのことです。


・焦熱地獄

殺生、偸盗、邪淫、飲酒、嘘、邪見の罪を犯した者が堕ちる地獄。徹底して火で焼かれる。熱した鉄の棒で叩かれたり、串刺しにされる。ここの火に比べれば先の5地獄は霜雪ほどに涼しく感じる。焦熱地獄の業火を豆粒ほど地上に持ってきただけで、地上は焦土に化すと云う。


・大焦熱地獄

殺生、偸盗、邪淫、飲酒、嘘、邪見、尼を汚す罪を犯した者が堕ちる地獄。焦熱地獄の10倍の苦しみを味わう。炎の刀で皮を剥がされ、沸騰した鉄汁を飲まされ、炎以外何もない世界に放り出される。火の苦の極限の地獄。


・阿鼻(あび)地獄

父母殺害などの五逆罪を犯したものが落ちる地獄。五逆罪とは、父を殺すこと、母を殺すこと、悟りを得た聖者を殺すこと、僧団を破壊すること、仏のからだを傷つけることを指すようです。ここに辿り着く迄、頭を下にして落下していきますが、到着するのに2000年(!)かかります。

阿鼻地獄に到着すると、迎えるのは体長400キロメートルに及ぶ銅製の地獄の番犬、64個の眼と長さ40キロの牙を持ち、八つの手と18本の角をもつ鬼達、無数の鉄蛇、虫たちが住む世界。阿鼻とは間断がないこと。苦痛がずっと続きます。無間地獄とも云う。他の地獄も何度も鬼達に殺されますが、風が吹くともとに戻ります。この時、一瞬だけ苦しみが無くなりますが、阿鼻地獄はそれすらないのです。

等活地獄から大焦熱地獄まで、一段下がる毎に苦痛が10倍増しになりますが、阿鼻地獄に至っては1000倍増しになるようです。もう簡略してブログにするだけで気が滅入る内容です。
 
 
しかし六道の中で、地獄の描写は圧倒的です。これ以外にも副地獄という地獄も多数存在しますが、これは人間の犯罪の種類が増えると、それに合わせて増えていったようです。各地獄に堕ちる罪の種類を見るに、ほとんどの人間は該当するのでは?と思います。


人間の業はそれほど深いということなんでしょうか。


鬼


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参考文献

ひと目でわかる 現代人のための仏教知識百科 監修/ひろさちや 主婦と生活社 

浄土の本  極楽の彼岸へ誘う 阿弥陀如来の秘力  学研


プロフィール

紅葉屋呉服店:店主 加藤大幾

Author:紅葉屋呉服店:店主 加藤大幾
名古屋市内で呉服中心で古美術も扱っているお店をやっています。

主に趣味のお寺と神社の参拝を中心としたブログです。

◆紅葉屋呉服店
momijiyagohukuten.com

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